場面No. | 場面 |
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15 |
「Have a nice stay.」
ポーターが部屋の扉をあけてくれる。さくら達は香港のホテルに着いたのだ。
さくらは部屋に入ると嬉しそうにはしゃいでケロちゃんの入ったバッグを放り出してカーテンを開けるのに大忙し。
ケロちゃんは自力でバッグからはいだすと苦しそうに「さ〜く〜ら〜」とひとこと。
その言葉にさくらは慌ててケロちゃんの元に戻るが本人はプンプン。
「ごめんなさい…」
「ワイのこと、かんっぜんに忘れとったやろ!」
「え?エ、エヘヘヘ…。」
「エヘヘやあるかい!」
やっとバッグから這い出してきてイスの上に飛び乗るケロちゃん。
「ま、今日のとこは懐かし香港に免じて勘弁しといたろって……。」
ケロちゃんはキョトンとしている。「どこ?」
ハウーとずっこけるさくら。
「香港ですわ☆」とさくらに代わって答える知世。
「これが…?……ほんこーん!?!」
画面いっぱいに目をパチクリしたケロちゃんは現代香港の様相に思い切り驚いたようだった。
部屋の窓には一面に香港島の絶景がひらけていた。
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16 |
場面変わって、九龍半島から香港島へ向かうスターフェリー(天星小輪)の中。
窓から顔を出して景色を楽しむさくらがいた。
「ふ〜、香港島ってすっごく近いんだね!」
「ああ…。これに乗ってるのも5分くらいだからな。」
ガイドブックを見ながら答える桃矢。
「ふ〜ん。」
「おい、あんまり乗り出すと鮫に喰われっちまうぞ。」
「え?サメさんがいるの?」
「ガイドブックに載ってた。(嘘)」
「ふわ?」さくらは水辺にカモメを見つけた。
「鮫か?」
「うっわ〜☆カモメさん、カモメさん、カモメさん、カモメさーん!」
「さくらちゃん、今日も元気だね。」
隣に座っていた雪兎が声をかける。それに恥ずかしそうに答えるさくら。
「あ、あの…、わたし…ふね…好きなんです…。」
「ハハッ☆ぼくもだよ。」
そんなサマをしっかり撮影している知世。
「さくらちゃん、いい感じですわあ☆」
知世の髪の隙間から顔を覗かせるケロちゃん。
「あとでワイも撮ってや。」
「はい☆」
ニッコリと微笑む知世。
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17 |
フェリーは香港島に着いた。
香港らしい色とりどりの看板がそこかしこに見える。
地図を調べている桃矢達に対して、ちょっと建物の陰に隠れるようにしてバッグから顔を出したケロちゃんをかばいながらさくらと知世はクレープらしきものを食べている。
「ほんまに変わってしもたなあ。」
「ケロちゃんが香港にいたのって、ものすごーく昔のことだったのね。」
「けど…、気配は変わってない。」
ボオッと光るケロちゃん。見上げると工事中の建物が不気味な感じだ。
「昔と同じ魔の気配が残っとる。日本ではもう薄まってもうた懐かし気配や。それに…」
ケロちゃんと共に上を見上げるさくらと知世だったがその間にケロちゃんはさくらのクレープを奪って一口に食べてしまった。
「こーの、モグモグ、食いもんがうまいっ!!」
「あぁっ!ケロちゃん!」
フウと息をつくケロちゃん。さくらはそれを見て「ムカ〜!」
「どうかしました?」
様子の変化に気づいた知世がケロちゃんに声をかける。
「クジ運の良さそうやないさくらが特賞やなんて…。」
「なんですってえ?!」
「まあ聞け。世の中に偶然は無いっちゅうんがクロウの持論やった。さくらが特賞当てたんも、なんか意味があるかもしれん思てな。」
真剣に聞き入るさくら。
「なーんてな☆」
「へ?」
「ワイとしたことが香港の気ぃにあてられてもうたかなあ。アハハハハ…。」
そんなやりとりを看板に止まった二羽の白い鳥がジッと眺めていたのには誰も気づきはしなかった…。
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18 |
場面は変わって、またあの夢の中の部屋。
天井からは光が射し込んでくる広い部屋。下には水が満ちている。
「まただ…。」
さくらが上を見上げると、天井の格子の外に二羽の鳥の姿が見える。
さくらは走って鳥の下までたどりついた。しかしよく見えない。
すると何かの気配を感じてさくらは振り返る。視線の先には女がひとり空中に浮かんでいた。
「だれ…?」
女の顔は確認できない。しかしだんだんと間近に感じてくる。
女は帯状のものをさくらに向けて伸ばしてきた。前の夢でも出てきたあのリボンだ。
さくらは何かに惹かれるようにそのリボンをつかもうとするが、その瞬間に目がさめた。
つかもうとしたその腕はベッドの上で宙をつかんでいるだけだった。
「また、あの夢…。」
朝日が射し込んでくるベッドから体を起こしたさくらは考える。
「誰なんだろう?」
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19 |
飲茶屋にて。
テーブルには次から次へと点心のセイロが積み上げられて行く。
「それと、それを4つと、えーとこれも4つ。あとこっちのと、あ、それも。」
雪兎がひっきりなしに注文を繰り返す。目の前にうずたかく積み上げられるセイロを前に「ほえ〜」と声をあげるしかないさくらと知世。
「とりあえず☆」
やっと注文を終えた雪兎が、点心のチェック票を受け取る。
「じゃ、食べようか。」
「ハ、ハイ…。」
やはりこうしか言えないさくら達。桃矢だけはいつもの風情で落ち着いている。
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20 |
「知世ちゃん、半分ずつにしない?」
「ええ☆」
しかしセイロを選んで取り上げると、なんと中にはケロちゃんが点心をパクついている姿が!
「ケロ!?」
ハッとして口をつぐみセイロを戻すさくらだったが、桃矢は見逃さない。
「ケロ?」
「んーん。やっぱり別のにしよーっと。」
ごまかそうとするさくら。
「カエルの足でも入ってたのか?」
「ん!んーん。なんでもないの☆どれにしよーかなー。」
「…いま戻したのくれ。」
「へ?」
「同じの近くにあるでしょ?別にどっちだって…。」
「それがいい。」
さっきさくらが戻したセイロを指さす桃矢。
「オ、オイ…。」
セイロからつぶやき漏れるケロちゃんの声。
「でも…。」
「そ・れ・が・い・い!」
しかたなく意を決してセイロに手をかけるさくら。
一気にセイロを持ち上げるが、なんと中身はカラッポ!
そおっと目をあけてケロちゃんがいないことに安心するさくら。
「早くよこせ。」
「あ…」
桃矢の言葉にやっと我に返ってセイロを渡そうとする。
ところがケロちゃんはそのセイロの下に張り付いていた。ビックリして固まるさくら。
「や、やっぱりわたし食べる!!」
サッと手を引くさくら。受け取ろうとした桃矢の手が無情に宙を舞う。
「見て見て!おいしそうだよね。」
と知世に振るさくら。桃矢は思いきり不満そう。
「お兄ちゃん、ごめんね。」
「桃矢…」
雪兎が間に立ってなんとか一件落着。
ケロちゃんはまた点心をパクつこうとするがしっかりさくらにつまみ出されてしまう。
桃矢はあきらめ顔でガイドブックを開く。
「これ食ったら、次はバードストリートに行くからな。」
「バードストリート?」
「鳥さんたちがいっぱいいるところだよ。」
雪兎の答えに思い切り嬉しそうなさくらだった。
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21 |
そしてバードストリート。狭い路地に鳥かごがひしめき鳥の鳴き声がこだましている。
「すっごーい!鳥かごがいっぱい☆」
「香港の人は鳥が好きで、自分の自慢の鳥をカゴにいれて連れて歩いたりしてるんだって。」
「そうなんですかぁ☆」
雪兎とさくらの会話を聞きながら後ろでうっとりしながらビデオを撮影している知世。
ケロちゃんは知世の髪の隙間から顔を出しながら感慨深げにしている。
「バードストリートかあ…。」
「ご存じですの?」
「このへんは昔と変わってへんみたいやなあ。」
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22 |
「あぁっ!」
さくらのベストショットを見つけた知世は走って追いかける。
「可愛い〜☆」と言いながら小鳥に近づくさくらの姿を知世はしっかりビデオに収める。
それを見つめる天からの目。さくらの真上にある電線には以前にもいた二羽の鳥の姿があった。
その視線に気がついたさくらはハッと顔をあげる。
あたりを見渡すが何もみつからない。そのさまに知世も声をかけてくる。
「どうしました?」
「なんか…誰かに見られてたような…。」
あたりは不気味に鳥の声ばかりが響いている。
ケロちゃんも顔を出してきた。
「たしかに妙な気配がする。」
「まさかクロウカードが香港にも?」
「いや、これは違う気配や。もっとこう…邪悪な…。」
「あれ?」
雪兎が驚いた声をあげた。さくらも思わず振り返る。
「あんなとこにも。」
「ん。逃げたんじゃねーのか?」
桃矢と雪兎の会話が示す方向を見るさくらだったが、そこには二羽の鳥が!!
「あの鳥っ!」
それが夢の中で見た鳥だと気がついたさくらは声をあげるが、それと同時に鳥は飛び立ってしまう。
さくらは鳥が飛んでいった方向へと走りだした!
「さくらちゃん!」
あわてて声をかける知世だったが、そこへ髪の間からケロちゃんもささやく。
「ワイらも追うんや。」
「…。」
桃矢と雪兎がいるため返事ができない知世。
「どうしたんだ?さくらの奴…。」
「早う!」
ケロちゃんのせかす言葉に知世も動いた。
「すぐ戻りますので…。」と、知世は桃矢と雪兎にペコリとおじぎをするとすぐにさくらの後を追う。
キョトンとする桃矢と雪兎。
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23 |
その時さくらは相変わらず鳥の後を追って走っていた。
鳥が姿を消したためさくらは裏路地にもぐりこむと封印の鍵を取り出して小声で「レリーズ」と唱える。
まぶしい光があたりを包むと、「ジャンプ!」の声と共にさくらの体は屋根を越えて高く飛び上がった!
空中であたりを見回したさくらは鳥の姿を発見して、屋根づたいにジャンプしながら鳥の後を追う。
「いた!」
そして降りたところは不気味な井戸の前…。
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24 |
「なに?この感じ…。」
まわりには異様な気配があるらしい。さくらは恐る恐る井戸に近づいてみるがどうやら古井戸らしく、水は見えるが中は石ころで埋まっているようだった。
さくらは井戸に背を向けてあたりを伺う。すると、それに呼応するかのように今まで埋まっていた井戸は何も見えなくなり水の中からはまたあの夢で見たリボンがするすると伸びてきた。
さくらが気がついたときにはリボンはさくらの頭上に迫ってきていた。驚くさくらだったがリボンの動きを見ているうちにだんだん夢心地になっていく。そしてそのままさくらはリボンに引っ張られるかのように井戸の中に足を踏みいれそうになる。。その井戸の中には夢に出てきた女の姿が!!
「目をさませ!」
聞き覚えのある声が響いて、さくらは正気を取り戻した!
それによって鳥はまた姿を消し井戸も元に戻ったようだった。さくらが振り返るとそこには剣を携えた小狼の姿があった。
「リーくん。どうして、ここに…。」
さくらは小狼の方に向き戻ろうとしたが、井戸に足をかけていたためバランスを崩してそのまま浅い水面に落ちてしまった。
なんで?という表情の小狼。さくらはというとびしょ濡れになりながら「ハウ〜!」とぐずるしかなかった。
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25 |
舞台はまたバードストリートに戻る。
知世がさくらを探している。
「さくらちゃん、どちらまで行かれたのでしょう?」
人混みの中でよそ見をして歩いてきた女の子にぶつかる知世。
「あっ、すいません大丈夫ですか?」
ぶつかってきたのはなんと苺鈴だった。
「大丈夫だけど…日本語?」
「こんにちは☆」
「大道寺さん!?どうしてあなた、ここにいるの?」
「さくらちゃんがくじ引きで特賞を当てたんですの。それで…。」
「よぅ!こむすめ〜!」
ケロちゃんも知世のハンドバッグから顔を出した。
「あらぁ?ぬいぐるみも一緒ぉ?」
「なにぃ!」
「ちゃんと検疫とおったの?」
「もういっぺん言うてみい!!」
苺鈴はわきわきと指を動かすとペチンとケロちゃんの頭を叩いてハンドバッグに放り込みそのまま口を締めてしまった。ハンドバッグの金具にシッポを挟まれてピィ!と声をあげるケロちゃん。
「ところで小狼見なかった?さっきいきなり妙な気配がするとか言って走ってどっか行っちゃったのよ。」
「私もさくらちゃんを探してるんですが…あっ!さくらちゃん!」
はるか先からさくらと小狼がとぼとぼと歩いてくるのが見える。
「小狼!」
さくらの方も知世に気がついた。
「知世ちゃん。」
「どうなさったんですの?お怪我はありませんか?」
「大丈夫だよ。」
「小狼!どこ行ってたのよぅもう!」
苺鈴も小狼に抱きつく。
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26 |
「さくらーっ!」
桃矢の声が響いた。桃矢と雪兎が走ってさくらの元にたどりついた。息をつきながら問いつめる。
「ひとりでどこ行ってたんだ!」
「…ごめんなさい。あの…えーと…水たまりに落ちちゃって…それで…。」
「…たく…。」と、あきれ顔の桃矢。
「あれ?」
雪兎が小狼と苺鈴の姿に気がついた。
「なによ!照れなくってもいいでしょ。」
小狼は腕を組もうとする苺鈴を引き離そうとしている。
「こんにちは。」
小狼は雪兎に挨拶されてカアッと赤くなる。
「こ、こんにちは…。」
「こんにちは☆」
元気に返事を返す苺鈴をよそに、小狼は苺鈴をムリヤリ腕から放す。
知世はびしょ濡れのさくらを気遣う。
「とりあえず、どこかで着替えないと…。」
「うん…。クション!!」
クシャミをするさくら。
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