「劇場版さくら」シナリオ(#4/6)

 このページのトップに直接リンクされてるところは無いはずなのに、これを読んでるって事はあなたはかなり好奇心旺盛な方ですね?(^_^;)
いちおう劇場版を記憶からおこしたシナリオです。AR台本などを元にしたわけではなくあくまで劇場にかかったものが基本となっています。あくまで映画を見ている人がその場面を思い出す補助的な目的でおこしたものですので、万が一映画を見ていない方がここを覗いたとしてもこれを全編読んで映画を見た気にはならないでいただきたいものです。(アニメはあくまでアニメとしてLD/DVD/VCで見ることが可能ですし。)
 このシナリオは台本形式にはなっていませんし、また小説でもありません。AR用でもありませんのでセリフが誰のものかも前後関係で判断すればよいと特に書いていません。あくまで映画の場面を表す補助用として好きな形式におこさせてもらいました。この形式や記述の未熟さについては一切クレーム却下です☆(^_^;)
なお場面No.を振っていますが、これもまた実際のシーンNo.やカットNo.とはいっさい無関係です。


場面No.場面
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39 香港島。中環のスターフェリー乗り場付近。
さくら達に対して苺鈴が巨大ビルを前に自慢げに案内をしている。
「奥のナイフみたいなのがバンク・オブ・チャイナ!でぇ、屋上に大砲がデザインされているのが香港上海バンク!ここは香港経済の中心地でぇ、ふたつの銀行はライバル同士なの☆」
「へえ〜。」
感心している雪兎。
さくらはと言うと上の空といった感じで聞いている。
「やっぱりさくらが香港来たんは偶然とちゃうかったみたいやなぁ。」
ケロちゃんが顔を出して話しかける。
「じゃあ、わたしがくじ引き当たったのも全部あの夢の中の人の仕業なの?」
「そんな事、できる方がいらっしゃるんでしょうか?」
「わからん。けど、そうやとしたらなんでさくらを…。」
40 その間にも観光はつづいている。お寺…香港島内を走るトラム(路面電車)…そしてキャットストリート。
骨董品屋が多いこの通りでさくら達はアクセサリー等を物色している。
しかしそんな折り、苺鈴は小狼に対して不満をぶつけていた。
「どーしてあたし達が一緒にいなきゃいけないのぉ?」
「仕方ないだろ?母上がそうしろって言うんだから。」
「観光案内してあげなさいって?」
「ちがう。」
「じゃ、なによお!」
「何か、危険が迫っているらしい。」
小狼達の会話をよそに、さくらは桜の形をした髪飾りを気に入ったようだ。
「きれーい☆…そういえば、夢の中の女の人もきれいな髪飾りしてた…。」
ちょっと考え込むさくら。そこを目ざとく見つけた雪兎が声をかける。
「きれいだね。」
「はい☆」
思わず雪兎に髪飾りを手渡すさくら。雪兎はそれを受け取ってちょっと眺めるとお店に入っていった。
「これ、ください。」
エッ?と驚くさくら。
「そんな…わたし…あの!…雪兎さん…わたし…。」
店先でオロオロするさくら。
しかし雪兎はにこやかに店を出るとさくらに髪飾りをプレゼントする。
「はい。…きっと似合うよ☆」
そのにこやかな笑顔にさくらは真っ赤になりつつも髪飾りを受け取る。
「ありがとうございます☆」
そんなふたりを見ていた小狼は思いきり悔しそう。自分も雪兎さんから何かプレゼントして欲しかったのだろう。
「どうしたの?」
「なん・でも・ない…!」
気がついた苺鈴が声をかけるが目一杯にぎりこぶしの小狼は一応のごまかしをいれる。
41 しかしそんな状況は一瞬にして崩れた。小狼はただならぬ気配を感じたのだ!
さくらも続いて気配に気づいたようだ。
ふたりが視線を向けた先の電線には、あの二羽の鳥がいた!!
鳥はやおら飛び立って逃げていった。
さくらは急いで後を追う。
「おい!さくら!!」
桃矢は呼び止めるがさくらはどんどん行ってしまう。
さくらの後を追って小狼と知世も走っていった。
「あの、莫迦…」
雪兎と桃矢もその後につづいてさくらを追いかける。
さくらは走りながら胸から封印の鍵を取り出した。
そして路地を曲がると光がほとばしる。
小狼は一足先に追いついて路地を曲がるがそこは袋小路になっていた。
気配を追って反対に走り出す小狼。
「まったく!」
それを追う桃矢。
42 さくらは塀をジャンプの魔法で乗り越えて裏路地に入りこんでいた。
「ケロちゃん、出ても大丈夫だよ。」
封印の杖を手に裏路地を走るさくら。
「魔の気配がする!それもムッチャ強い!!」
ケロちゃんも飛び出してくるなり叫んだ。
さくらは鳥を追いかけ路地を走り回る。
「あれが夢に出てきたっちゅう鳥か?」
「ウン。」
「ありゃあただの鳥やないで!気ぃつけや、ものごっつい魔力を持っとる!」
鳥はさくらが追いつくのを待っていたかのようにクルクルと回っていたが、ある店に飛び込んでいった。
「入って来いってこと?」
「そうらしぃな…。」
43 さくらとケロちゃんは木製のガラス扉を開くと店内に入っていった。
この店もまた骨董店のようだった。しかし中は薄暗く、人の気配は感じられない。
「だーれもおらんみたいやな。」
「うん。…アッ!」
「どないした?」
「水の音…してない?」
耳をすますとたしかに水のしたたる音がしている。
「してる…。」
さくら達はその音に向かって歩いた。するとその先の机の上には一冊の本があった。
ケロちゃんが本の上に積もった埃を吹き飛ばすと、本の表紙がようやく見てとれた。
さくらはその表紙に描かれた女に覚えがあった。本の表紙を見入るさくらだったが、表紙の女の目がいきなりさくらの方を向いたような気がした。
44 それを見たさくらは何かに憑かれたように本を手に取った。
「おーい、さくら、何を…?」
ケロちゃんは思わず呼び止めるがさくらは構わない。
本からは「おいで…。」と呼ぶ声が聞こえてくる。
あわててケロちゃんが止めに入るが、その時さくらの異常な様子に気がついた。
「おいで…。」
本からは声が聞こえてくるがそれはケロちゃんには聞こえていないようだ。
さくらはお札で封印された本を開こうとした。ケロちゃんが指を押さえて止めようとするがさくらの方が力が強い。
「おいで…こっちへおいで…。」
本を開こうとする力はますます強くなる。
「さくらぁ!しっかりせぇ!!」
ケロちゃんは懸命に止めようとするがもう止まりそうにない。
45 「しゃあない…。」
ケロちゃんはさくらの指にかみついて止めようとした。しかしその矢先に店内に桃矢達が入ってきた!
「さくらちゃん!」
雪兎の声にあわてて隠れるケロちゃん。
「てめえよう、あっちこっち探し回ったんだぞ!」
桃矢は怒っているようだった。
「この気配…。」
一歩遅れて入ってきた小狼は気がついていた。
そして振り向いたさくらは明らかに様子がおかしかった。
「さくら…?」
桃矢達に続けて苺鈴や知世も店に走りこんできた。
その時さくらは無表情のままで封印を破って本を開いてしまった。本からはまばゆい光があたりに広がる。
「さくら!どうしたんだ?おい!」
駆け寄った桃矢がさくらの肩をゆさぶるとさくらはようやく正気を取り戻した。
ところが今度は本からいきなり大量の水があふれ出してきた!
店はみるみるうちに水に呑みこまれていく。
「な、なに?」
苺鈴や知世の足下にも水が広がってゆく。
さくらもまた水に呑みこまれてしまった。あたりは様子が変わり、夢で見た光景へとつながってゆく。
46 天井から射し込む光。さくらは水の中を泳ぐととりあえず水面に顔を出した。
ケロちゃんもさくらのバッグから飛び出してきた。
「大丈夫か?」
「ケロちゃん…。」
「正気に戻ったみたいやな。」
「ねぇ、これって夢の中?」
「夢ではない!」
突然大きな声が響きわたった。
振り返ると空中に夢の女が現れた。
「ここは私が魔力で作った空間。」
あの二羽の鳥が女のもとに舞い近づき、女の服の一部であるリボン状の帯へと変化した。
いや、リボン状の帯が鳥に化けていたとするべきだろうか。
「なぜ?あいつではないのだ?」
女の口調は明らかに不満そうだった。
47 「おまえは、さっきの本の?」
ケロちゃんの問いに答えることなく女は続ける。
「なぜ、おまえのような小娘がここへ来たのだ?」
女がひと睨みすると水が巻き、さくらと女を取り囲むように水の壁を作った。
「答えよ!!」
ケロちゃんは危険を感じた。
「さくら…」
「ウン」
さくらはカードを取り出すと「フライ!」の声と共にケロちゃんを連れて宙に舞い上がった!
「クロウカード…?!」
さくらの魔法にあきらかに女は動揺していた。
「なぜ?なぜおまえがクロウカードを持っている!」
女はさくらを水の固まりで攻撃する。さくらはすんでのところでかわしてゆく。
「あの人、クロウカードの事を知ってるみたい!」
「ああ…。あぁっ!さくら、前!!」
女はひときわ大きな水の固まりをぶつけてきた。もう避けきれない!
48 「フリーズ!!」
カードの呪文が響き、水は瞬時にして氷となった。さくらはそれによってギリギリかわすことに成功した。
「クロウカード?」
女が視線を向けた先には剣をかまえた小狼の姿があった。
「リーくん!」
さくら達を助けたのは小狼のカードだったのだ。
「おまえも…クロウカードを…。」
女はつぶやく…。
さくらは小狼のもとに下りてきた。
「どうしてここに?」
「水に呑まれたあと気づいたらここにいた。」
「じゃあ、あそこにいたみんな?!」
「どこかにいるはずだ。」
「早く探さなきゃ…。」
しかしそこに女の声が響く。
「探さずともよい!」
さくらは女の方を向く。
「おまえ達と共に取り込んだ者はそこにいる。」
女が手を挙げると、水の壁の中から球が4つ静かに姿を見せた。
球の中にはそれぞれ知世、苺鈴、桃矢、雪兎が入っていた。どうやら気を失っているようだ。
49 「わたしはクロウ・リードを呼んだのだ。なのになぜ…。」
女はブツブツとつぶやく。
「あの姉ちゃん、どっかで…。」
ケロちゃんは女の正体に覚えがあるようだ。
「クロウ・リードはどこだ?」
女はさくら達を問いつめる。
「二手に分かれるぞ。俺がやつの動きを止める。その隙におまえはみんなを助け出すんだ。」
小狼がさくらにそっと伝える。さくらはうなづいた。
「クロウ・リードは、どこだっ!!」
女は水で攻撃を開始した。
50 「いくぞっ!」
小狼とさくらは二手に分かれた。小狼は女の目の前に駆け上がりカードを取り出す。
「ストーム!!」
小狼の呪文とともに女を取り囲む風の渦ができた。
その間にさくらはみんなの元に近づいてカードを取り出した。
「ソード!」
さくらの手には剣が出現した。さくらはその剣で知世の球を一刀両断にする。
そして間髪を入れずに次のカードを取り出した。
「フライ!」
剣は空飛ぶ杖に姿を変えた。
「ケロちゃん!」
ケロちゃんは自分よりはるかに大きな知世を抱えてフラフラとさくらの元に…。
「苺鈴ちゃん…お兄ちゃん……雪兎さん……。待っててください、すぐ戻ってきます!」
すべてを助けている暇はない。さくらは残るみんな、とりわけ雪兎に想いを残しながらも断腸の思いでその場を離れる。
51 女をストームの魔法で閉じこめた小狼もみんなのもとにたどりついた。しかし持っている剣では苺鈴の球に傷ひとつ与えることができない。
「くそっ!ダメか!」
やはりカードの魔法でなければ打ち勝てないらしい。
52 その間に逃げるさくらの背中で知世が目をさました。
「気づいたか?知世。」
「良かったー。」
さくらも一安心した。とりあえず知世を地上に降ろす。
「あ、あたしいったい…。ここは?」
「とりあえず説明は後や!」
状況の変化をみんなは感じていた。ストームの魔法に囲まれた女の様子がおかしいのだ。
小狼も剣を構え直した。ただならぬ気配がする。
「きさまら…許さん…。」
ストームの魔法が女のリボン状の帯によって切り裂かれた。中からは目を怒りで赤く染めた女の表情が見てとれる。
「許さん!!」
その叫びと共にストームの魔法は壊れ去った。と、同時に水の壁が一気に押し寄せて小狼を呑みこんだ。
「ケロちゃんはここにいて!」
さくらはひとりフライの魔法で飛び上がった。
「さくらちゃん!」
知世が心配そうに叫ぶ。
さくらは小狼に近づいたがあたりは水が渦を巻いて姿は見えない。
53 「リーくん!リーくん!返事してぇ!!」
さくらは懸命に小狼を探す。と、そこに小狼の声が響いた。
「に、逃げろ!」
小狼の姿が見つかった。水に呑まれびしょ濡れになっているが剣を地に刺して耐えていたらしくいまだ女の前にいた。
「逃げるんだ…。」
さくらは小狼に近づこうとするが水による攻撃を受けなかなかたどり着くことができない。
「来るな!おまえ達だけでも逃げるんだ…。」
「でも…。」
小狼はかなり弱っているようだ。
「上空は魔力が弱い。上に飛べば出られるはずだ…」
「だまれ!!」
女の声が小狼を制止した。小狼はそのまま水の柱に飲み込まれると、他のみんなと同じく球に閉じこめられてしまった。
「リーくんっ!!」
小狼の姿に呆然となるさくら。
54 「フッフフフ、クロウ・リードが来ぬのであれば、そなたらの魔力を奪い自ら探し出すまでのこと。貴様もわが糧となるがよい!!」
女の背後から巨大な水の壁がさくらを目がけて迫ってくる。
ケロちゃんが呆然としたままのさくらの元に飛んできた。
「さくら。とりあえず逃げるんや!」
小狼も球の中で「逃げろ…」の声をのこし意識を失う。
「このままやったら、みんな捕まってまう!さくらぁ!!」
苦しい決断だった…。断ち切れぬ想いを背にさくらはその場を離れる。
襲い来る水の壁を避けながらさくらは知世のもとにたどり着き、そのまま上へと飛び上がった。
「おのれ…逃がさんっ!!」
女はさらに水で攻撃をかける。しかしさくらにはわずかに届かない。
光射す上空まではあとわずか!
「あれが出口やっ!」
ケロちゃんの声にさくらは渾身の力を振り絞った。女の攻撃はさらに威力を増すが、すでにさくらの方が速くなっていた。
そしてまばゆい光の中にさくら達は飛び込んだ!
空間から逃げ出したさくら達を女は憎々しげな目で睨み付けるだけであった。
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