いったいいつの話なの?
制作関係者がいついつの間のエピソードと公表しているはずですが、私は基本的に劇中に表現している事からしか判断しません。裏話などは、物語の付け添えであってもメインであってはいけないというのが私の考えだからです。
何年というのが劇中に登場するわけではありませんが、冬休みに入る終業式の日が12/24(木)となっているので近年では1998年の冬ではないかというのが有力だと思います。1996年から始まった原作版では少しズレますが劇場版はアニメ版の続きですんでこれで考えるとエピソード中のタイミングともぴったり一致します。
アニメ版ではクロウ・カード編のクライマックスでアーシーのカードが最後のクロウ・カードだと明言しているため、アローのカードを捕獲している劇場版は必然的にその前である事が成り立ちます。そのため劇場版に苺鈴が出ている事も当然なわけです。また、これを裏付けるかのようにアニメ版では1999年最初に放映された「さくらと雪の新学期」の回で、ケロちゃんがさくらの集めたカードを広げるくだりがありますが、その中にしっかりとアローのカードが含まれています。TVではもちろんアローのカードを捕獲する回はありませんので、これによって劇場版はTV版での1998年冬〜1999年春のエピソードだとするのが妥当だろうと考えられるわけです。
なお、さくらが最初に夢を見た時の部屋の壁にかかっているカレンダーも、正しい月のがかかっているあたりにこだわりを感じます。(ちゃんと12/24が木曜になっているのだ。)
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シーンに意味あり
劇場版公開時にアニメファンとは無関係な映画関係掲示板に書き込まれた感想をトータルすると、つまらなかったとする人はすべて「元を知らないから」という事でした。どうも書き込みなどの前後関係を見ていくとこのあたりの方は劇場版さくらは進んで見に行ったというより子供を連れていって一緒に見たというパターンが多いように見受けられました。
では、本当に元を知らなければ楽しめなかったのでしょうか?
それについては少し反論があります。もちろん「楽しめなければおかしい」という訳ではありません。しかし「もしかして楽しめるはずのところを見逃していたのではないか?」という事なんです。というのは、この映画では初めて見る人への配慮が意識的にか無意識にだったのかいたるところに散りばめられていたからです。
映画には大きく三通りあり、一から作っていたり原作はあるものの全く独立していて何も知らなくても構わないもの、原作があるがその最初から作られているため見るのに苦労しないもの、原作があってそれを見ている事を前提にしているため設定や環境説明をしないものがあります。一般的な映画はほとんど原作を知らなくても見るのに問題ないように作られていますが、アニメではすでに原作を知っている事を前提にして説明を省いているものがままあります。(中には「うる星やつら」の劇場版のように状況を『一切説明しない』という割り切ったものまであります。これは臨機応変で一概に悪いと言うことはできません。)
劇場版のさくらもすでに原作(この場合はTVアニメ版)があり、しかもその途中のエピソードという設定なので特に最初から説明を加えているわけではありませんが、よく見るとさりげなく状況説明の役割をなしているエピソードがあります。それがまずこの冒頭のシーンなのです。
冒頭ではさくらがああいう格好をしてカードを捕獲しているという役割を実際にやって見せています。しかもそれに伴う知世やケロちゃん、小狼や苺鈴の立場まで見せています。このシーンが無かったとしたら、初めて見る人にとっては「友人を追いかけてビデオを撮りまくるストーカー少女」や「香港のバードストリートでいきなりビルのてっぺんまでジャンプする少女」とか、「井戸に引き込まれそうになった女の子の前に、剣をかまえた少年が飛び出してきた」などとあまりにも突拍子の無い展開になっていたわけです。冒頭のシーンがあるだけで「ああ、よく分からないけどこういう立場の女の子がこんな魔法を使うんだな。」と心がまえができるわけで、それだけでもかなり役に立っているといえます。もちろんこのシーンがアローの魔法を紹介する伏線にもなっているわけですからまさに一石二鳥ではなかったでしょうか。また、この後に出てくる学校のシーンも小狼や苺鈴が香港から来たという事のさりげない説明になっています。これが無いと香港にいきなり小狼や苺鈴が現れる事が不自然に見えるわけで、これまた非常にうまく織り込まれたエピソードだと思います。
・・・しかし、劇場で見ている時の話ですが上映中に「ねえ、○○ってなに?」としきりに母親に尋ねている少年がいました。どうやら姉にむりやり連れてこられた弟のようです。幼稚園くらいらしい少年には、さすがに明示的な説明がないとワケわか状態だったようです(笑)
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苦しくない?
はじめて夢の中で水に引き込まれた時にさくらは「あれ?…苦しくないよ。」と言っています。このセリフのためにそれ以後さくらは水の中でもほとんど苦しそうな表情を見せませんし、また逆にラストの決戦の時に海から汲み上げられた水に閉じこめられたときの緊迫感にもつながっています。さりげないけど重要なセリフではないかと思います。
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旅行日程はいつ頃?
旅行の目録に10月〜3月というのが読めますし、冬休み中であることは間違いないでしょう。しかし正月前か後かという事についてはさすがに決定的な事は見つかりませんでした。正月前ならば香港の街に正月飾りがあるだろうと考える事もできるのですが、香港は中華系なので大いに飾り立てて祝うのは旧正月になりますのでこれはあまりアテになりません。ただ、小狼や苺鈴が香港に帰ってきている事を考えるとやはり正月前と考える方が妥当だと思います。なぜならば旧正月の時は小狼も苺鈴も日本で三学期を迎えているため、新正月の時に里帰りするのが自然だろうと考えるためです。
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クロウ・リードは何者?
劇場版でいちばん説明不足なのはクロウ・リードの存在だと思います。これは明らかに初めて見る者への配慮に欠けていました。ただし劇中にさりげなく「そのカードらは魔術師クロウ・リードが作った」とか、知世を聞き役にして「クロウさんはとっても有名な魔術師さんでしたわよね」などと言わせていたりはします。
しかしこの映画でのいちばんの悪人も、もちろん「クロウ・リード」ですね。キザでナンパなだけでなく後世にまで禍根を残すとは…さくらはやっぱりクロウに振り回されっぱなしなわけです。
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香港行きの飛行機について
日本から香港への飛行機と言うと国内は有名どころがほとんどにアメリカ系航空会社にと色々ありますが、真っ先に思い浮かぶのは香港の航空会社「キャセイ・パシフィック」です。劇中に出てくる飛行機も機体の緑色がキャセイっぽくはあります。しかしキャセイの機体ペイントとはまったく違うので正直なところそう言い切るには苦しいところがありした。ところがつい先日、キャセイの昔の機体ペイントの写真を見つけました。なんと劇場版と同じ緑の線が機体横に一直線に描かれているものでした。すでにこのペイントの機体を見ることはできませんし劇中を1998年だとしてもその頃にはこの機体はありませんでしたが、もしかするとそれを参考に描いたのかもしれないと考えたりしました。(ただし尾翼のシンボルマークは似ても似つきませんが。)
それから搭乗した時刻ですが、桃矢がさくらを呼ぶ時にバックに見える時刻表示パネルによると11:00の36番ゲートからのようです。これだと香港に着くのは夕方ちょい前になり、さくら達が特に着替えもせずにすぐ外に出ていったのにも合点がいきます。
ついでに、劇中の空港シーンで「30-38」というゲート表示が見えますが、ここを成田空港と考えた場合「30〜38ゲート」というのは存在しません。実際の成田では「31〜37ゲート」になっています。
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ケロちゃんと手荷物
ケロちゃんをさくらは手荷物として飛行機内に持ち込みます。しかし手荷物ならばX線を通すはずです。空港係官はケロちゃんのガイコツをどういう風に見ていたのだろーか、それとも中には綿しか詰まってなかったのだろーかなど考えるとなんか楽しくなってしまいます☆
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さくら達の泊まってるホテルはどこ?
制作者も「リージェント」をイメージしていたようでしたが、映画を見た限り実在のホテルではリージェントかニューワールド・ルネッサンスしか『あり得ません』(断言)。
というのも窓から見える景色を考えると位置的にその2つしか考えられないためです。あと近くではシェラトンやペニンシュラもありますが、どちらもヴィクトリア港の水辺からすこし離れるため景色があのように見える事はないと思いますしルネッサンスはビジネス系で福引きのツアーでここに泊まるとは思えませんので、やはりリージェントしか残らないでしょう。逆に言うと、いかにリージェントから見える景色を正確に表していたかがよく分かります。
このあたりは香港に行った際に実際にリージェントに泊まって確かめたかったのですが…できませんでした。なぜならば、いちばん安い部屋でもふだん泊まっている安宿の三週間分の値段だったからです…。
(その代わりホテルのロビーには行きました。あの景色はやはり間違いないと思います。)
それから、さくら達が泊まっているのは30階のようですが(さくらの正面の部屋の号数表記が「3025」なので30階25号室となる)、リージェントには30階はありません。(^_^;)
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スターフェリーのあれこれ
さくら達は香港に来て最初にスターフェリーに乗りますが、この時さくらは「香港島ってすっごく近いんだね」と言います。これはまた、さくら達が泊まっているホテルが九龍側にあるというのがよく分かるセリフでもあります。実際、フェリーから見える景色は間違いなく九龍→香港島へ向かうもので非常に正確です。
それからフェリーの船体やイスは「まさにそのまんま」です。観光客が写真を撮るのも当たり前の光景で、知世ちゃんがビデオを回しまくっていても決して不自然ではありません(笑)
蛇足ですがさくら達が乗っているのは2HK$の一等船室です。
それから、桃矢が「鮫に食われる」とガイドブックに書いてあったと言いますが、もちろん嘘です。あんな近海に鮫がちょくちょく出ていたら大騒ぎです。あとさくらがカモメを見てはしゃぎますが、実際にはカモメを見る事もまずありません…。
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香港と看板
色とりどりの大看板はまさに香港を象徴するかのような光景です。夜はネオンが輝いてこれまたきれいなのですが、この美しさの理由のひとつには法律でネオンを点滅させてはいけないというのがあるからかもしれません。
フェリーで香港島にやってきたさくら達はこの看板の応酬に会うわけですが、見たところ香港島とは思いっきり離れている油麻地(ヤウマティ)などの景色も混ざっていたような気もするのですが…。
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