「劇場版さくら」各エピソード(#3/4)

知世の気配り2
 知世の気配りシーンその2です。
小狼の実家に泊まる事になったさくら達。さくらと知世は同じ部屋に寝ることになりますが、ここでケロちゃんが小狼母やクロウ・リードの事を語ります。その際なんですが、知世がベッドのサイドポール(正式名称知らん)に掛けていたバッグをサイドテーブルに移すシーンがあります。その後、ケロちゃんはしっかり知世がバッグを掛けていたポールに腰を下ろしているのです。つまり知世はケロちゃんの居場所を作るためにわざわざバッグを移動させていたわけです。このへんも本編とは特に関係ない細かな描写と言えると思います。
さくらと夢の中
 さくらは日本で香港で何回も夢を見ますが、ここにも何げにスタッフのこだわりがあります。というのは、ここでさくらが着ているパジャマの事です。さくらは日本では冬用のパジャマ、香港では夏用のパジャマ、そして小狼の実家では借り物の中華なパジャマを着ていますが、夢の中ではきっちり描きわけられています。当たり前の事なんですが、同じ事の繰り返しにもなりかねないシーンでこういうちょっとした配慮は気持ちよいものです。
小狼の実家のある場所
 小狼の実家がヴィクトリア山の山頂付近にある事はわざわざピークトラムに乗っていっているあたりからも分かります。山頂付近でなければおそらく車を使っているはずです。
 さくらが夢にうなされ小狼母に連れられて外に出た時ですが、外の景色にはしっかり「バンク・オブ・チャイナ(中國銀行)」が見えています。ここからも山頂近くである事がはっきりとうかがえます。
苺鈴の家はどこ?
 苺鈴はさくら達が小狼の実家に泊まった翌朝にちゃっかり訪ねてきているので近所だというのは分かります。また「あたしも泊まればよかった」と言っているあたりも近所なのがうかがえます。実のところTVアニメでも「さくらのさよなら苺鈴」の回で、苺鈴はさくらの家に泊まりにいった時に「香港のあたしん家と小狼の家ってすぐ近くだったの」というセリフがあるため、本当にすぐ近くにあるようですね。
知世はベストショットを逃さない
 知世はさすがにさくら歴(!)が長いだけあって、ビデオを撮るのも手慣れています。映画の中でも「フェリーの中で雪兎さんと仲良くするさくらちゃん」や「小狼母に挨拶するさくらちゃん」や「小狼母にキスされるさくらちゃん」など、見逃せないシーンでしっかりビデオを構えていました。そういや路面電車でも雪兎さんにハニャ〜ンとなってるさくらちゃんをしっかり撮ってたし、キャット・ストリートでも本編とはまったく関係なくアクセサリーを物色するさくらちゃんをしっかり撮ってたし、スタッフもこのへんのこだわりは本当に深いようです。
中國銀行と香港上海銀行
 中國銀行と香港上海銀行の並んでいるさまは香港国内でも有名です。ただし苺鈴が「ナイフみたい」と表している中國銀行ですが、実際その形から一部に不吉だという声もあるようです。どちらの銀行も風水を元にして建てられているというのがいかにも香港らしいです。
 なお、現在では映画のようには見えず2つの銀行の間にもう1つ高いビルがそびえています。それは1996年くらいからずっと建設中だった高層ビルです。(JTB発行の'99〜'00年版「ワールドガイド香港マカオ」を見ると2つの銀行と建築中のこのビルがはっきりと写真に撮られています。)
 実を言うと、この建築中のビルがラストの決戦の場だと考えると地理的に非常にぴったりと収まります。偶然だとは思いますが、まあ世の中に偶然は無いっちゅうんがクロウの持論ですしね(笑)
うずまき線香のお寺
 うずまき線香のお寺にキャット・ストリートと来たので、真っ先に思い浮かんだのは「文武廟」でした。実際そこに写真を撮りにもいったのですが、よくよく考えると文武廟からキャット・ストリートまでは歩いて1分足らずです。もちろんトラム(路面電車)に乗ったりする必要はありません。そこで、いったいどこだ?と考えた直したのですが、もうひとつ浮かんだのが「天后廟」です。そこで油麻地にある「天后古廟」に行ってみると見事にイメージ通りの場所でした。ただし、ここだと映画の地理的にはおかしいので映画的にいちばん妥当なのは天后駅近くにある方の天后廟ではないかと考えています。(香港には天后廟と呼ばれるところが四カ所ほどあります。)ここだとするとそこからトラムに乗ってキャット・ストリートに向かうのは合点がいきます。
 なお、私が訪れた天后古廟は文武廟と違って観光客はほとんど寄りつかず地元老人の憩いの場所と化していました。
キャット・ストリート
 ガラクタ市場ことキャット・ストリートですが、以前はどうか知りませんが現在ではあまり観光客も地元民も来ておらず閑散としています。どちらかというと一通り上にいったハリウッド通りの方が観光客向けではあるのですが、ここもまた現在では賑わってはいません。(好況が続いていた香港にも近年になって不況が訪れましたのでその影響なのかもしれません。)
 それからキャット・ストリート自体は階段状のところではなくそこを横切るまっすぐな通りです。映画でも「CAT STREET」の看板が出ていますが、あの看板の真っ正面の通りが本当のキャット・ストリートだったりします。しかも階段状のところはどこも映画のように広くなったところは見受けられず思い切り狭いか、旧バードストリート並みに雑多になっているかのどちらかでした。まあ多少急になっていることを除けば映画と似たような階段通りもあったのですが、そちらにはほとんど骨董店はありませんでした。
 もちろん映画的表現では全然OKなのですが、実際に足を運んでみていちばんガッカリしたところではあります。

 蛇足…キャット・ストリートの看板ですが、実際にはかなり低い位置にあり小狼なら腰くらいの高さに来るのが正しいようです。
悔しい小狼
 さくらが雪兎に髪飾りをプレゼントされているのを見て思いっきり悔しそうな小狼は、原作・アニメ版ファン にはたまらないシチュエーションでした。さくらカード編になって、小狼の興味が雪兎からさくらへと移っていったので次の映画ではこのへんの描写も変わってくるかもしれませんね。
さくらを追う小狼達
 二羽の鳥の存在に気づいたさくらが走って追いかけ、小狼と知世がその後を追いますが、ここではその人物の位置関係が見事です。上にいたさくらがまず走り、同じ高さで道の向かいにいた知世が追いかけ少し遅れて下にいた小狼が走って追いかけます。この前後の描写では本当に微妙なところまできちんとキャラの位置関係が描かれていて気持ちがいいくらいです。
 なお、小狼がまず鳥の気配に気づいて次にさくらが気づき、最後まで苺鈴は気づかないというのもお互いの魔法力の強さの違いが明確に現されていて見事だったと思います。
さくらに追いついた小狼達
 骨董店の中にさくらを追って桃矢や小狼が飛び込むシーンも人物の前後関係が見事です。店の中にいるさくらにどうして気づいたかを考えると、追いかけ始めた時のように小狼がさくらの気配を感じとって追いかけてきたと考えるのが妥当です。しかしいざ場所が分かったとなると小狼よりも桃矢の方が足が速いのは道理で、そのために桃矢が最初に飛び込んできて小狼が二番目になっていたわけです。あくまで邪推にすぎませんが。
小狼の魔法
 さくらを魔導士から助けるために小狼はフリーズの魔法を使います。実はここのシーンはバックの音楽とかぶっていて音響の悪い映画館では呪文のかけ声がほとんど聞こえませんでした。DolbyDigitalは良いのですが、必ずしもそれを再現できる映画館は少ないという良い教訓のようでした。
小狼は目をそらさない
 映画の冒頭で小狼はさくらに対して「よそ見をするな!」と叫びますが、実際にTV版はともかくこの映画の中で小狼は敵に対して決して目をそらしません。魔導士を前にしてさくらにしゃべりかける時でもずっと睨みつけています。このあたりがさくらと小狼の性格や戦い方の違いを明確に表しているところだなーと感心しました。
クロウの魔法力
 水の玉に閉じこめられたみんなを救うために、さくらはソードの魔法を使い知世が入っている玉を一刀両断にしました。ところが小狼が使っている剣では苺鈴が入っている玉に傷ひとつ与えることができません。このあたりにもさりげなくカードの魔法と小狼の実力の違いが示されていたと思います。
知世は知らない
 魔導士の世界から戻ってきた時に、ケロちゃんは「知世は分からんかったやろうけど、ワイらがおったんはあの本の中の世界やったんや。」というセリフを言っています。実のところ、骨董店に飛び込んできた時に知世は苺鈴とともに一歩遅れて店内に駆け込んでいました。さくら達がいたのはそこから角を曲がったところだったので知世はさくらが本を持っていたところを見てないわけで、ケロちゃんのセリフはこの事を言っているわけです。なんて細かい描写だろうかと思わせるひとことでした。
カードキャプターの出番
 「よっしゃあ!カードキャプターの出番やあっ!!」とケロちゃんが叫んで知世がいそいそと衣装を取り出すあたり、それまでのふさぎこんだ雰囲気を見事に吹き飛ばす1シーンでした(笑)
でもこれが知世の衣装を着る必然にもなっているわけですから、やはり重要な展開だったと言えるでしょう。またこれは原作を知らない人に「さくらは変身するわけではないのだ」と知らしめる上でもじゅ〜ぶん役に立ったと思います。

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